土木学会関西支部共同研究グループ「内水圧が作用する地下貯留トンネルの力学挙動に関する調査・研究」平成30年度報告書
共同研究グループ「内水圧が作用する地下貯留トンネルの力学挙動に関する調査・研究」の平成30年度報告書及びワークショップ配布資料を掲載しました。
●平成30年度報告書(PDF:約13.4MB)
●ワークショップ配布資料(PDF:約3.2MB)
平成30年度報告書の序文より…
近年、大都市では、豪雨に伴って発生する局所的な浸水被害に対処するため、地下貯留シールドトンネル(地下河川、放水路等)が建設されている。完成後の地下貯留シールドトンネルでは、その使用目的から長期にわたる高度な耐久性・機能性が要求される。
首都圏で供用中の「首都圏外郭放水路」や「神田川・環状七号線地下調節池」は、二次覆工を省略したRC セグメントによる大断面地下貯留シールドトンネルである。ところが、これらのシールドトンネルでは、RC セグメントにコンクリートの剥離、ひびわれ、漏水などの損傷発生が報告されており、その原因として、外水圧に匹敵する内水圧の繰り返し載荷に伴う覆工の軸力減少、シール材の膨張、シール溝の設置位置の影響などが指摘されている。
一方、関西では、「寝屋川地下河川」や雨水増補幹線の完成、大阪市の「淀の大放水路」等の放水路、下水道幹線、滞水池(貯留管)の完成に向けて事業が進められているが、供用後のトンネル覆工の損傷実態、損傷原因、損傷に対する対策については未解明な部分が残っているのが実情である。
そこで、本研究グループでは、内水圧が繰り返し作用する地下貯留シールドトンネルについて、損傷実態の把握、損傷原因となる力学挙動の解明、および対策手法の開発を行うことを目的として、平成29年度と平成30年度の2年間にわたって研究活動を実施した。
平成29年度は、神田川・環状七号線地下調節池、寝屋川北部地下河川古川調節池および北島調節池、北浜逢坂地下貯留管、首都圏外郭放水路の実態調査、およびセグメント工場視察を実施し、実態を把握するとともに、調査公表されている資料、管理者からの聞き取り、および現地調査等に基づいて損傷実態を分析し、応力計算やFEM 解析によるシミュレーションによって損傷原因を考察し、これらの内容を平成29年度報告書としてまとめた。
本報告書は、前年度の研究活動に引き続いて平成30年度に実施した損傷原因の分析、および内水圧トンネルの設計法の検討結果について述べ、2年間にわたる研究の成果をベースとして損傷対策の提案ならびに浸水対策施設の管理運営方法への提言をまとめたものである。
本報告書が都市の安全にかかわる関係者の努力の一助となり、ひいては市民の安全に多少なりとも寄与できれば幸いである。
最後に、本研究グループの活動にご協力いただいた管理者の皆様、ならびに研究会活動に積極的に参加されたメンバーの皆様に深く感謝の意を表するものである。
「内水圧が作用する地下貯留トンネルの力学挙動に関する調査・研究」
代表 東田 淳