土木学会関西支部共同研究グループ「内水圧が作用する地下貯留トンネルの力学挙動に関する調査・研究」平成29年度報告書
共同研究グループ「内水圧が作用する地下貯留トンネルの力学挙動に関する調査・研究」平成29年度報告書(PDF:約11.5MB)を掲載しました。
(2018/8/17:目次(3ページ目)を一部変更しました。)
平成29年度報告書の序文より…
近年、大都市では、豪雨に伴って発生する局所的な浸水被害に対処するため、地下貯留シールドトンネル(地下河川、放水路等)が建設されている。完成後の地下貯留シールドトンネルでは、その使用目的から長期にわたる高度な耐久性・機能性が要求される。
首都圏で供用中の「首都圏外郭放水路」や「神田川・環七地下調整池」は、二次覆工を省略したRCセグメントによる大断面地下貯留シールドトンネルである。ところが、これらのシールドトンネルでは、RCセグメントにコンクリートの剥離、ひびわれ、漏水などの損傷発生が報告されており、その原因として、外水圧に匹敵する内水圧の繰り返し載荷に伴う覆工の軸力減少、シール材の膨張、シール溝の設置位置の影響などが指摘されている。
一方、関西では、「寝屋川地下河川」や雨水増補幹線の完成、大阪市の「淀の大放水路」等の放水路、下水道幹線、耐水池(貯留管)の完成に向けて事業が進められているが、供用後のトンネル覆工の損傷実態、損傷原因、損傷に対する対策については未解明な部分が残っているのが実情である。
そこで、本研究グループでは、内水圧が繰り返し作用する地下貯留シールドトンネルについて、損傷実態の把握、損傷原因となる力学挙動の解明、および対策手法の開発を行うことを目的として、2年間にわたって以下の研究活動を実施することにした。
- 平成29年度は、公表されている資料、管理者からの聞き取り、および現地調査等に基づいて損傷の実態を分析し、応力計算やFEM解析によるシミュレーションによって損傷原因を特定する。
- 平成30年度は、初年度の研究成果を基に、内水圧トンネルの設計法の検討、ならびに損傷に対する有効な補修・補強方法の開発を行い、浸水対策施設の管理運営方法への提言をまとめる。
本報告書は、この活動計画に沿って平成29年度に実施した現地調査3箇所、聞取り調査1箇所、セグメント工場視察1箇所の結果に基づいて損傷実態を整理するとともに、実態を踏まえた損傷原因の分析方針、ならびに内水圧によるシールドトンネルの変形挙動に関する考察をまとめたものである。
最後に、本研究グループの活動にご協力いただいた管理者の皆様、ならびに研究会活動に積極的に参加されたメンバーの皆様に深く感謝の意を表するものである。
「内水圧が作用する地下貯留トンネルの力学挙動に関する調査・研究」
代表 東田 淳