『関西の土木遺産のある風景』フォトコンテストへのご応募、ありがとうございました。多くの方々から大変素晴しい作品をお送りいただきましたこと、主催者として深く感謝申し上げます。
過日、審査委員会が開催され、厳正な審査の結果、下記の通り受賞者が決定いたしました。
ご応募いただきました皆様の作品は、土木学会が催す行事のほか、制作するホームページ、facebook、出版物などに使用することがございます。
なお、応募総数は141作品(ぶら・土木の部:17作品、一般の部:124作品)でした。
※ 作品をクリックすると大きな画像をご覧頂けます。
最優秀賞
【撮影者】
原田 正信 様
【撮影構造物】
由良川橋りょう(京都府舞鶴市・宮津市)
【撮影者による写真の説明】
丹後鉄道を撮影するのに、地方鉄道の雰囲気が出せる由良川橋梁をどうしても入れたかった。
【寸評】
橋を中心に強調することなく、あえて画面いっぱいに山を取り込んだことが、かえって橋の存在感を表わすことにつながった。山の緑と由良川橋りょうの赤と丹後鉄道の青のコントラストが綺麗で、鉄道を入れることで橋のスケールを伝える点もとても素晴らしいと感じた。
優秀賞(ぶら・土木の部)
【撮影者】
藤間 翔太 様
【撮影構造物】
十三大橋(大阪府大阪市)
【撮影者による写真の説明】
橋の中央部に路面電車を敷設することが可能な設計になっているが、そう使われていない。レトロ橋なのに何にも登録されていない。なんとも残念な橋ですが、個人的には非常にお気に入りの橋なので高いところ(梅田スカイビル)から撮影しました。タイドアーチ橋好きにはたまらない橋です。
【寸評】
長時間露光による撮影によって描かれた車や鉄道の光跡に加え、画面を傾けることが、淀川を挟んだ2つのまちに動的なつながりをもたらした。不思議なアングルで撮影されており、遺産として登録されていないが、都会を支える橋らしさが出ているところに魅かれた。
優秀賞(一般の部)
【撮影者】
上野 邦雄 様
【撮影構造物】
百間堤(滋賀県大津市)
【撮影者による写真の説明】
大津市志賀町大物の百間堤は、嘉永5(1852)年の洪水後、約6年を費やして築造された巨石空積みの堤です。四ツ子川の土石流から集落を守りながら用水を確保する現役施設です。天端幅は約18m、高さ5~9m、延長は名の通り約200m。自然の力、人の力、子孫を思う気持ちの大きさを高所から琵琶湖と対比しました。
【寸評】
関西にこんな土木遺産があったのかと、ハッとさせられた。「写真の説明」からも分かるように、撮影の意図が明確であり、そのことが作品に忠実に再現されていることも高く評価したい。遺産登録の候補としても考えさせられる場所だと教えてくれる作品であった。
入選(ぶら・土木の部)
【撮影者】
橋本 亮 様
【撮影構造物】
由良川橋りょう(京都府舞鶴市・宮津市)
【撮影者による写真の説明】
対象は、大正12(1923)年に完成し、90年以上が経った現在でも現役として活躍している由良川橋梁で、平成27年度に推奨土木遺産に選定されています。余部橋梁と同じく、日本海からの強風や塩害の影響を受けながらも、力強く佇む姿に心が震えました。今後も長く『そこにある、いつもの風景』であって欲しいです。
【寸評】
「写真の説明」にあるように強風や塩害の影響を受けながらも力強く佇む姿をよくとらえていると感じられる作品であった。
【撮影者】
渡邉 洸輝 様
【撮影構造物】
友ヶ島砲台群(和歌山県和歌山市)
【撮影者による写真の説明】
レンガ構造物という人工物が、雨風などで風化し破壊され、また植物が生えてきて、徐々に自然と調和しつつあると感じました。
【寸評】
今なお残る戦争遺産としての時の流れをとらえている一枚であった。
入選(一般の部)
【撮影者】
久保 俊哉 様
【撮影構造物】
旧国鉄五新線(未成線)鉄道構造物群(奈良県五條市)
【撮影者による写真の説明】
五新線を走っていた路線バスが廃線になるので最後に懐かしいボンネットバスが走りました。
【寸評】
ボンネットバスと町並みがなんとも言えず魅力的な作品であった。
佳作(ぶら・土木の部)
【撮影者】
高松 亮太 様
【撮影構造物】
大川・中之島の橋梁群(桜宮橋、天満橋、天神橋、大江橋、淀屋橋)(大阪府大阪市)
【撮影者による写真の説明】
土木遺産である天神橋と未来都市的なビル群が混じり合う光景が印象的でした。
【寸評】
土木遺産と都会の景観が混ざり合う写真であり、絵はがきになりそうな一枚と感じた。
佳作(一般の部)
【撮影者】
伊藤 智造 様
【撮影構造物】
旧国鉄五新線(未成線)鉄道構造物群(奈良県五條市)
【撮影者による写真の説明】
五條から新宮までの鉄道として着工され、戦争で工事中断、戦後工事再開するが、軌道敷設の段階で専用道としてバス運行に転換するも、並行する道路交通の向上により運行廃止となる。時間が掛かりすぎたため、時代に取り残された悲哀を感じる橋です。廃止の少し前のバス運行時の写真です。用をなくした後はどうなるのかな。
【寸評】
複雑な歴史を持ち、どこか悲哀を感じる四連の橋のアーチが美しい。俯瞰撮影することで、橋が鉄道橋として建設されたことだけでなく、地域の様子まで無駄なく表現している。鉄道が走ることがなかった未成線ではあったが、バスのルートとして住民の役に立っていたことを記録しようと狙ったことを評価した。
【撮影者】
和田 修 様
【撮影構造物】
阪堺線(大阪府大阪市)
【撮影者による写真の説明】
阪堺線は、大阪市で唯一残っている路面電車で、身近な市民の足として使われています。路面電車が環境と調和した交通手段として見直されている現在、レトロな雰囲気を醸し出している阪堺線を応援する思いで選択しました。
【寸評】
古くからある路面電車と最新の超高層ビルとの対比が面白い。平行・垂直に引かれた車両や建物のアウトラインの中で、夕闇によって浮かびあがった軌道の描く曲線に土木の存在を感じさせられた。今と昔が調和していてどこか懐かしい気持ちにさせられる作品である。
審査員特別賞
【撮影者】
宇高 亘 様
【撮影構造物】
JR御着駅(兵庫県姫路市)
【撮影者による写真の説明】
この写真はJR神戸線御着駅のホームです。御着駅は新快速も止まらない小さな駅ですが、明治33年開業の歴史ある駅です。駅は土木工学の様々な分野が融合した空間なのではないかと思います。派手さのある土木遺産ではないのですが、土木工学の発展とともに117年間補修を繰り返し、未だ現役の小さな駅を選びました。
【寸評】
必ずしも土木遺産を直接的に表現したとは言い難く、本フォトコンテストが意図するものとは直接的には異なるが、雨の夜に反射したプラットホームやレールを作品として収めようとした写真表現としての感覚を評価したい。これからはスマートフォンではなく、専用のカメラを構えて、土木の力強さや美しさを追い求めて欲しい。
【総評】
土木的価値と写真的表現力の総合力の観点から各賞を選定させて頂いた。選考過程では議論が白熱し選者それぞれのスタンスの違いで票が割れたりもしたが、選考が進むにつれ共通認識がある程度形作られ意見がまとまった。審査員特別賞は被写体が土木遺産に選定されていないものではあるが写真的表現力にはすぐれたものがあり選外にするには忍びなくこのような形になった。選考後に判った事だが、この作品が最年少の方の応募によるものであったと聞いて審査員一同、大変嬉しく思いました。