平成19年度 土木学会関西支部技術賞
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技術賞
- 【対象業績】
- 真空吸着車輪ゴンドラの開発
- 【受賞者】
- 本州四国連絡高速道路株式会社
- 【受賞内容】
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本州四国連絡高速道路における長大橋のアンカレイジやPC高架橋等のコンクリート構造物は、海峡部の過酷な環境下にあるため、定期的な点検・調査・劣化防止、修復等の保全作業が特に重要である。これら保全作業のためには、安定はしているが時間的・経費的コストを伴う枠組足場によるものと、不安定で作業時の反力は取りにくいが低コストのゴンドラによるものが主流である。
今回、ゴンドラによる保全作業の高度化を試みた。ゴンドラによる鋼構造物の保全作業の高度化は「磁石車輪ゴンドラ」により実現している。一方、コンクリート構造物に対しては磁力による吸着は不可能であるため、真空による吸着機構すなわち吸着車輪を考案した。
この吸着車輪は汎用のゴンドラに装着でき、高圧水による壁面洗浄作業やドリルによる穿孔作業も可能である。さらに、毎分7mの速度での移動も可能で、風速10m/秒の環境下でも安定して壁面に吸着できる。 本技術により、多数存在するコンクリート構造物の保全作業を安全・確実・迅速・低コストで実現できる手法を提供した。
本業績は、コンクリート面に真空吸着するという独創的な発想で新たな技術を開発したこと、安全性・作業性・経済性の検証を行い、今後のコンクリート構造物の維持管理に対する発展性、汎用性が高いことなどを評価された。
- 【対象業績】
- 阪神高速8号京都線(上鳥羽~第二京阪)の建設
- 【受賞者】
- 阪神高速道路株式会社京都建設部
- 【受賞内容】
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阪神高速道路8号京都線(上鳥羽~第二京阪間)は、京都市伏見区を油小路通に沿って南北に縦断する延長約5.5kmの自動車専用道路であり、平成20年1月19日に開通した。
本路線は全線高架構造であり、建設に当たっての課題は、地震に強い安心安全な道路であること、新技術を活用しコスト縮減を図ること、京都という歴史都市にとけ込む道路であること等であった。これらの課題に対して、建設地点の地域性を考慮した地震動を設計に反映させるとともに機能分離支承を用いた2方向免震構造を先駆的に取り入れた。また、鋼製橋脚の柱中間部でコンクリートと鋼を接合させるアンカーフレームレスの新工法、桁脚剛結構造、無塗装耐候性橋梁、砕石マスチック舗装など汎用性の高い新技術を採用し、コスト縮減を図った。工事においては、輻輳する道路、鉄道等の厳しい施工条件の中、関係機関との連携を図り、最新の技術を用いて難工事を克服した。さらに,京都をイメージする鳥居をモチーフにした門型形状の橋脚の採用、高架下横断歩道部のたまり空間の設置など、周辺環境と調和した道路整備に取り組んだ。
本業績は、新技術を駆使してコスト縮減に努めたこと、都市内における困難な施工条件の中で地域環境、新たな街づくりに配慮したこと、採用した技術の汎用性から今後の都市高速道路建設に大きく寄与することなどを評価された。
- 【対象業績】
- まちづくり・道づくりと一体となった鉄道の新駅設置 さくら夙川駅の誕生
- 【受賞者】
- 兵庫県
- 西日本旅客鉄道株式会社
- ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社
- 【受賞内容】
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兵庫県西宮市において自治体と鉄道事業者とが連携し、「都市計画道路・建石線」の拡幅整備事業とJRの新駅「さくら夙川駅」設置事業を同時に実現した。
2つの工事を同時に進めるため、鉄道線路を順に移設する仮線工法を採用し、現道路の2車線を4車線化するため既往の鉄道桁を架け替えた。新駅については線路の間にホームを、線路の直下に駅舎を構築した。非常に狭隘な施工スペースの中、現道の交通を確保するとともに、高速・高密度の列車運行に支障をきたしてはならないため、難易度の高い工事であった。また、地下水は灘五郷の酒造りに欠かせない「宮水」であり、これに影響を与えないことが求められた。仮土留めの工夫や鋼管にコンクリートを充填したCFT部材を用いた複合構造を採用する等、施工方法の工夫と確実な施工管理を行い、無事に工事を完了した。 新駅については「自然のうるおいを感じられる駅」を基本コンセプトに、地域に密着した駅名やデザインに関する検討を重ね、地域に愛される駅づくりを進めた。また、バスバースの設置やバス路線の運行経路の変更、駐輪場の設置等を併せて実施し、既成市街地の大幅な利便性向上を実現した。
本業績は、自治体と鉄道事業者とが連携し、関係者が一体となって道路拡幅と新駅設置を同時に実現したこと、列車運行、狭隘地、宮水等の厳しい制約条件の中で技術を駆使し、無事に工事を完了したこと、本事業の完成により既成市街地の大幅な利便性向上を実現し、地域に貢献したことなどを評価された。
技術賞特別賞
- 【対象業績】
- 関西国際空港第2滑走路整備
- 【受賞者】
- 関西国際空港株式会社
- 【受賞内容】
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関西国際空港第2滑走路の整備は、平成17年10月に起工し、約1年3ヶ月という短期間で、滑走路とその運用に必要な施設の整備を終えた。
1期空港島の沖に造成された2期空港島の造成地盤は、薄層転圧締め固め工法により強固な地盤に仕上げられた。第2滑走路の舗装設計では、その地盤強度や舗装構造の荷重伝播を適切に評価できる多層弾性理論を採用した。設計にあたっては、航空機B747の1脚と同等の荷重を持つ原型荷重走行車を用いた実路走行試験を実施し、耐久性の確保、経済的な設計を追及した。これらの取り組みにより、第2滑走路の舗装厚は、第1滑走路の約半分となる経済的な舗装構造を実現することができた。
また滑走路に埋込まれる航空灯火の設置においては、舗装工事と灯火工事の施工待ちを最小限にするため、上層路盤の施工と同時に灯火の基台と配管を埋め込む工法を開発した。この工法により、従来施工と比べ約3ヶ月の工期短縮を実現することができた。
本業績は、合理的な舗装構造設計法を確立し、実路走行試験による検証を踏まえてコスト縮減、環境負荷低減を実現したこと、従来の施工手順にとらわれず、舗装と航空灯火の一体施工により工期短縮を図ったこと、今後の同種工事での応用性が期待できることなどを評価された。
- 【対象業績】
- 歴史的砂防施設を活かした水辺空間
- 【受賞者】
- 大阪府枚方土木事務所
- 【受賞内容】
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約100年前に築造された砂防堰堤(天野川砂防堰堤・尺治川砂防堰堤)の機能を活かしつつ、現在の水辺空間に取り入れることで、歴史的な土木技術の継承と施設や自然環境の保全につながる「地域交流の拠点にふさわしい水辺空間」を目指し、天野川「水辺プラザ」を整備した。
砂防堰堤はそれぞれ、河川の狭小部、合流点部に存在しており、特に狭小部に存在する天野川堰堤においては、周囲の護岸はかなり浸食されていた。また、構造図等の詳細な資料が失われたため、このまま堰堤としての機能を継続し、保存することがよいか懸念されたが、河道の拡幅ならびに河畔林の保全を行なうことで、施設への負荷を軽減し、引き続き 砂防堰堤としての機能を維持できるよう整備した。 砂防堰堤は「登録有形文化財」に登録し、後世に向け保護継承を行い、水辺空間の整備においては地域住民の参画を得て「私市(きさいち)の水辺ワークショップ」を立ち上げ、検討を行った。
現在では、地域のボランティア団体等の協力による清掃等の河川環境維持活動が行なわれ、市民まつり『天の川七夕まつり』の際には約2万人の市民が訪れ、地域交流の拠点として活用されている。
本業績は、歴史的土木遺産の機能を発揮しつつ後世に向け保護伝承したこと、地域住民とワークショップを立ち上げ合意形成を図るなど、地域と密着した取り組みであること、土木事業に対する一般市民の理解を深める上で貢献度が高いことなどを評価された。