関西支部技術賞

平成18年度 土木学会関西支部技術賞

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技術賞

【対象業績】
JR山陽本線姫路駅付近における連続立体交差事業
JR姫路駅付近高架化(JR山陽本線、山陽新幹線、山陽電鉄線の交差箇所)

JR姫路駅付近高架化(JR山陽本線、山陽新幹線、山陽電鉄線の交差箇所)

【受賞者】
兵庫県
姫路市
西日本旅客鉄道株式会社
山陽電気鉄道株式会社
【受賞内容】

 JR山陽本線等姫路駅付近連続立体交差事業は、JR山陽本線約4.3㎞、姫新線約1.3㎞、播但線約1.0㎞を高架化し、踏切7箇所を除却するもので、平成18年3月26日に大規模切換工事を行い、JR山陽本線姫路駅付近の高架化が完成した。
 事前に駅東側高架を一部開通させ、4箇所の踏切除却を行うことにより、交通渋滞の早期緩和を図るとともに、主要な幹線道路がJRと交差する「大将軍橋」、「朝日橋」の2つの跨線橋については仮桁を架設し、工事期間中の南北交通交差路の確保に努めた。
 切換工事は、JR山陽本線、山陽新幹線、山陽電鉄線が相互に交差している複雑な箇所での切換を含め、9箇所同時施工となる前例のない大規模工事となるため、4日間にわたる列車運行時刻の変更や運休など、交通影響を最小とする切換計画を策定するとともに、工事に伴うリスク管理を徹底し、事前に関係機関と入念な調整を行うことにより、無事故で工事を完遂することができた。
 また、関連道路事業や周辺の土地区画整理事業と併せて実施することで、都市交通の円滑化、播磨地域の市街地の一体化を図り、都市基盤整備の促進に寄与した。
 本業績は、大規模かつ複雑な切換工事を、多くの事業主体とともに綿密なリスク管理のもとで安全に実施したこと、交差する幹線道路の通行を確保しつつ、可能な箇所については早期に踏切除却を行い、交通の円滑化など事業効果を発現したこと、まちづくりや地域の発展への貢献が期待できることなどを評価された。


【対象業績】
内在塩分を有するRC中空床版橋のリニューアル -阪和自動車道 松島高架橋-
松島高架橋の劣化損傷状況と劣化部コンクリートの撤去、リニューアルの完了

松島高架橋の劣化損傷状況と劣化部コンクリートの撤去、リニューアルの完了

【受賞者】
西日本高速道路株式会社関西支社
株式会社富士技建
株式会社フジエンジニアリング
【受賞内容】

 建設当初の内在塩分とひび割れから浸入した雨水の影響で、内部鉄筋が腐食し耐荷力が低下したRC中空床版橋に対し、主鉄筋断面部を含む劣化部コンクリートをウォータージェットで全面撤去した後、その上面に新たな鉄筋コンクリート断面を増設して剛性を向上させるスラブ増厚補強工法を採用、実施した。
 劣化コンクリートの撤去では、既設部コンクリートのマイクロクラック防止のため、ウォータージェット工法を用いるとともに、支間中央部のジャッキアップと全面支保工の併用工法により、鉄筋の応力解放による再配分に対処した。また、はつり後の既設コンクリート面に絶縁材を塗布して新旧コンクリート間の電気抵抗を高める、新たな鉄筋のマクロセル腐食防止工法を開発した。さらに、通行止めを避けるため、3段階の車線切換えによる車線規制下での施行とし、3.5ヶ月間の最小限の交通規制でリニューアル工事を完了した。
 本業績は、近年、全国的に問題となっている、塩害、中性化、アルカリ骨材反応等で劣化したコンクリート橋のリニューアル工法として、既存施設の有効活用により環境保全に寄与したこと、通行規制の最小化を可能とするなど社会的な貢献を図ったこと、新マクロセル腐食防止工法の開発によりライフサイクルコストの低減を図ったこと、汎用性の高い工法であることなどを評価された。


【対象業績】
わかりやすい河川防災情報の提供
河川毎にイラスト画像と色合いで危険の程度を“わかりやすく”提供

河川毎にイラスト画像と色合いで危険の程度を“わかりやすく”提供

【受賞者】
大阪府都市整備部河川室
【受賞内容】

 近年の全国的な集中豪雨による中小河川での水害では、増水時の河川の水位情報をはじめ、河川の危険の程度を"いかに住民にわかりやすく伝えるか"が課題となった。大阪府河川室では、これまで水位、雨量、潮位情報についてはホームページにより一覧表形式の数値情報で提供してきたが、よりわかりやすいものとするため、大阪府が管理する河川のうち、特に洪水被害による影響が大きな38河川について、市町村毎、河川毎にイラストで画面を作成し、河川の色あいを通常時:青色、警戒時:黄色、危険時:赤色として、危険の程度をわかりやすく表示することとした。
 さらに、この情報をパソコンに不慣れな方でも手軽に入手できるように、民間ケーブルテレビ会社の協力を得て、自宅のテレビでもホームページのイラスト画面をそのまま放送することを可能とした。
 これが、増水時に住民の自主的な避難行動を起こすきっかけとなるとともに、普段からの防災情報に対する意識啓発を図り、洪水被害の『減災』に大きく寄与することが期待される。
 本業績は、一般市民にわかりやすく情報提供する、市民と一体となった防災システムとして価値があり、市民の安全・安心の確保が図られるなど地域への貢献が著しいこと、全国的な汎用性があること、今後のさらなる改善による発展性が期待できることなどを評価された。

技術賞特別賞

【対象業績】
穿孔機械によるアスファルト舗装のリニューアル
穿孔状況

穿孔状況

【受賞者】
大阪府都市整備部
福田道路株式会社
【受賞内容】

 ポーラス舗装における経年的な目詰まりによる排水機能低下が全国的な課題となっている中、舗装体に多数の孔を開けることにより排水機能を回復させることを着想し、穿孔機械及び工法の開発を行ったものである。 目詰まりの現象は、既設道路の排水性舗装断面の舗装厚5㎝のうち上部1~2㎝部分において顕著であり、下部の空隙は確保されていることが確認されている。本技術は、既存のアスファルト舗装をロードヒーターにより軟化させ、剣山のような針のついた盤を油圧などの力でアルファルト舗装に押し込むことにより、舗装体に多数の孔を開け、雨水を浸透させる舗装体に改善させるものである。これにより、排水あるいは透水機能が低下した舗装体の機能を回復させることが可能となり、府管理道路5箇所における試験施工においても機能回復効果が確認された。
 本技術は、まだ解決すべき課題は残っているものの、確立されれば透水機能の回復による道路環境の改善に寄与するものと期待される。 本業績は、技術的に開発途上の側面はあるものの、排水性舗装の欠点である目詰まり解消方策として考案された画期的な工法であることなど、その独創性と今後の課題解決による発展への期待も含めて評価された。


【対象業績】
チャート式耐震診断システムの開発 ~海岸堤防の耐震性を早くかつ安く診断~
チャート式耐震診断システムの活用イメージ

チャート式耐震診断システムの活用イメージ

【受賞者】
一井 康二
井合 進
菅野 高弘
国土交通省近畿地方整備局 神戸港湾空港技術調査事務所
財団法人沿岸技術研究センター
【受賞内容】

 大規模な津波の来襲を伴う東南海・南海地震の発生が切迫し耐震性の評価が急務となっているが、シミュレーションに多くの費用・時間を必要とすることなどから、全国の防潮堤等海岸保全施設の約6割が耐震性調査未実施の状況にある。
 こうした中、海岸保全施設の施設形状と地盤の強度等の情報から、地震時の施設の残留変位を簡便に評価するために、模型実験、FLIP解析(二次元有効応力解析)を用いたパラメトリックスタディ等の結果を取りまとめることにより、沿岸構造物のチャート式耐震診断システムを開発した。
 当システムは、従来の簡易な耐震評価・点検手法のように施設の安定を定性的に確認するのではなく、施設の変形を定量的に求めることができるものである。また、長周期で繰返し回数が多い海溝型地震動やレベル2地震動に対応していることや、全国の港湾施設(重力式岸壁)、海岸保全施設(直立型、傾斜型)に適用できることも特徴である。今回当システムを開発したことにより、長大な延長の海岸保全施設の耐震性調査を効率的且つ経済的に実施できる。
 本業績は、これまで多くの費用と時間を必要としていた耐震診断を、本システムの開発により効率的・短期的に実施することができ、多方面での活用が期待されるなど、その汎用性・発展性を評価された。


【対象業績】
防波堤のリユース ~神戸港中央航路拡幅工事~
防波堤のリユース施工状況

防波堤のリユース施工状況

【受賞者】
国土交通省近畿地方整備局 神戸港湾事務所
【受賞内容】

 神戸港中央航路拡幅事業は、港湾物流の効率化及び物流コストの縮減を目的として、神戸港の主航路である中央航路の通航をスムーズにするため、航路の拡幅を図るとともに、港内の静穏度を確保するための防波堤を建設するものであり、この航路拡幅にあたり第7防波堤の撤去に伴って発生するケーソン等を新たに建設中の第8南防波堤に活用した。
 従来の撤去ケーソンの活用事例としては、強度が求められない場所への転用の事例が多いが、今回のように強度が求められる第一線の防波堤に本格的活用した事例は、全国的にも初めてである。
 このため、実施に先立ち、既設ケーソンの状態を把握するための種々の調査が行われるとともに、学識経験者、関係機関等による検討会において、構造や施工法について各種検討が行われ、これらを受け、適切な工法により防波堤再利用の実現が可能となった。
 本業績は、事業として港湾構造物の現地発生品をリユースするという新たな試みを行ったこと、構造や施工法について適切な評価と工夫で転用を可能にしたこと、廃棄物の削減により環境負荷の低減に寄与したこと、トータル整備コストの縮減を実現したことなど、時代のニーズに沿った使命感の下で努力を行ったことを評価された。


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